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著書名 精神分析入門 (上巻) (新潮文庫)
著者名フロイト
出版社 新潮社
ASIN 4102038051
装丁 文庫
価格 ¥ 660
感想文概要:<夢>に興味のある人におすすめ
本文: 太宰治は「斜陽」のなかに、「不良とは、優しさのことではないかしら」とか、「札のついていない不良が、一番、こわいんです」とかいう台詞をちりばめている。そんな台詞たちにであい、どきりとさせられた。これに似た<どきり>に、本著作の中でも、であった。正確な文章ではないかもしれないが、それは、こんな言葉だ。
 悪人と善人との違いは、前者が実際に悪事を働くのに対し、後者は夢の中でそれを行う、というところにある。
 <精神分析入門>というタイトルだけれども、私の印象が不正確なせいか、あるいは、私の興味がそこにあるからなのか、本著作の中心にあるのは、<夢>だ。少なくとも、私はそう思った。今朝、俺、こんな夢見たんだよな、いったい、どんな意味があるんだろう? なんて、興味を抱いた人も、気軽に、手にとって読んでみるといいかもしれない。
 

概要:お薦め
本文:本書は、1915年から17年までウィーン大学で一般向けに行われた講義の内容が記録されたものです。
講義記録が纏められた本だけあって、河合先生の「カウンセリングを語る」シリーズの様に、他のフロイト本よりも比較的平易な文章で綴られていて、
フロイトの書籍の中でも割と読みやすい初学者向きの本だと思います。
あの時代背景において、もっとも禁忌とされていたこと。
でもだからこそ、勇気をもって主張していかなければならなかった。
たとへ、社会から抹殺され孤立しようとも。
大切な友人を失う事となっても。
人々に嘲笑されようとも。
ブロイエルさんなんかも、分かってはいたけれどとてもとても言えなかった。
でも、フロイトはそれをやってのけた(言ったモン勝ちっていうか)。

なので、わたしの率直な感想としては、「フロイトかっけ〜」のひと言に尽きます。
あと、あまり”狙っていない”面白さがあって良かった。

概要:読みにくいが最高の参考書
本文:高校の時に心理学に興味をもって買ったのだが、ずっとほこりにまみれてた。
最近、大学院を考えるようになり、始祖の思想を確かめるために読んでみたが、確かにわかりやすく、口述文なので頭に入りやすい。
一方、洋書を日本語訳したものなので文書は一部読みにくい。
フロイトの理論はリビドーを重点においてるとされているが確かに性欲やエロティックな分野での思想が多かったように本書を読んで思えた。

概要:フロイトの意気込み
本文: フロイトがウィーン大学で行った講義の記録である。当時は精神分析が徐々に
発展し、広まってきたとは言え、まだ風当たりの強かったと推測される。その時
期、一般向けの公の場で精神分析の講義をするということで、フロイトも精神分
析を広めれるという気持ちで張り切っていたのかもしれない。内容を読んでいる
と、そのようなフロイトの張り切り具合が感じられるとともに、精神分析をあま
り知らない一般の人に分かり易く、丁寧に説明していこうという一生懸命さも伺
える。

 上巻の内容としては「錯誤行為」「夢」「神経症」について書かれており、今
まで公にされた「日常生活の精神病理」「夢判断」を中心とした論文をコンパク
トにまとめ、整理し、分かり易く解説している。

 一つだけを取り上げると、錯誤行為の中の物忘れというものがあるが、これは
重要なものであるからこそ忘れてしまうとフロイトは主張している。これと関連
するのは、実際の臨床の中における患者さんの無断キャンセルについてである。
その理由は様々だが、よく患者さんが理由として挙げることは「忘れてました」
というものである。

 セッションを忘れていたということは錯誤行為に当たるし、フロイトの主張に
従えば、それには意味があるということになるだろう。そして、ここで重要なこ
とはその意味を考える作業であり、無断キャンセルをしたことを責めて、もうし
ないようにさせることが重要なのではない。

 さらに、無断キャンセルをしたことやそれを忘れたことについて、「なぜ無断
キャンセルをしたのですか?」「なぜ忘れたのですか?」と理由を問うてもあま
り意味がない。それよりも、「無断キャンセルをしたことについてどう思います
か?/感じますか?」や「忘れてしまったことについて何か思いつくことはあり
ますか?」といったように、それ自体にまつわる空想や連想を聞いていくことが
治療をしていく上ではとても重要となってくるのである。

概要:「人間フロイト」入門
本文:本書はフロイト晩年の著作であります。各論的な学説的展開の中にもフロイト自身の人生観や学問研究についての大局的な信念、人間性の本質についての深い洞察がちりばめられており、「精神分析入門」というより「人間フロイト入門」として読むことができます。精神分析のエッセンスでもある第3部の神経症総論から読みはじめる方も多いと思われますが、あらためて読み返すと第1・2部の錯誤行為や夢もテンポ良く簡潔にまとめられており、すでに大作「夢判断」を読んだ方にとっても、漫然とした理解がスッキリ整理されるという点で一読する価値は十分にあるかと思います。

著書名 精神分析入門 下  新潮文庫 フ 7-4
著者名フロイト
出版社 新潮社
ASIN 410203806X
装丁 文庫
価格 ¥ 660
感想文概要:臨床に即して
本文: 下巻では神経症総論の続きと続精神分析入門が収められている。続精神分析入門で
は7講が収められているが、これは特に精神分析入門のように講義録のまとめのよう
な体裁をとっているが、実際には抗議録ではない。精神分析入門を発刊した後15年
も経っているので、新しい知見を付け加えるために書かれたものである。

 特に精神分析入門の時にはなかった死の欲動や超自我といった概念が導入されてお
り、その観点からの読み直しはとてもすっきりとしている。やはり概念が増えると説
明力や説得力が増えるのかもしれない。

 この下巻も色々と見ていくと面白いのだが、一つだけ思ったことを書く。最後の35
講の「世界観というものについて」のところで、フロイトは精神分析は治療技術から出
発しており、それは科学の一つの分野であると言っている。思想体系としてのものでは
ないと。現実的には精神分析は治療技術だけではなく、哲学や宗教や思想として広く世
界に知れ渡り、強い影響力を持っている。これは思想といって差し支えないぐらいであ
る。しかし、フロイトは謙虚にそこまでは考えておらず、臨床の中・実践の中での精神
分析というありように限定しようという意図を持っているようである。

 確かに精神分析的に見れば、世界の様々な考え方や現象を理解することができるよう
になるが、いうなればそれは精神分析の応用であるにすぎないのかもしれない。精神分
析の本質や真髄はやはり治療者と患者との間で織り成される精神分析的な治療という営
みにあらわれているのだろうと思う。フロイトが最後まで臨床家として生きたのはそう
いうことも関係していると思われる。

 このことからも本当に精神分析を理解していこうとするのであれば、本を読んだり、
知識を積み重ねることももちろん大切であるが、それ以上に臨床の中で精神分析的な生
の体験を積み重ねることがとても大切になってくるのだろうと思う。

概要:ただの入門書と思っては大間違い
本文:フロイトの難解で錯綜した学説を理解するには何度もそれを咀嚼することが必要です。この「入門」を一読するだけではフロイト理論の全貌を知ることは困難かもしれません。個人的には、「不安」の章を読むことにより、フロイトが他の著作で述べていて妙に心にひっかかっていたフレーズ(「暗闇を怖れるのは愛する人を見ることができないからである」)の謎が解けて嬉しかったのと、「感情転移」と「精神分析療法」の章で真の臨床家フロイトのモラリストとしての立派さや温かさを感じることができて興味深かったです。

概要:エロスは地球を救う
本文:自我、超自我、エスという心的領域と無意識、前意識、意識という心的作用を理解するのはたいへん難しかった。後半にいくにつれて1ページ1ページが重く、何度も立ち止まって考えることを繰り返した。しかし、そんな骨の折れる作業を忍耐強く続けられたのも本書がたいへん興味深く、説得力があるからである。
特に面白かったのはサディズムとマゾヒズムについての話である。人間の欲動はそもそも破壊を求めるものと、広義的な意味で性を求めるものとに分類される。破壊の欲求は古いものの再現に由来する。破壊された瞬間からそれを再現しようと企てたいのだ。しかし破壊は有機的なものを無機的なものへとする行為だ。これを人間に置き換えると生から死へという意識の流れになる。つまり我々の欲動の一つには死への欲求があるということになる。そのままでは人類が滅亡してしまうのだが、これを抑えてくれる、いやもっとありがたく言えば、これを助けてくれるのがエロスなのである!!!この観点からみればサドとマゾの関係だけでなく男と女のいろごともドラマチックなものだと思わずにはいられない。
しばしばお笑い芸人たちが「エロは地球を救う」という発言を耳にすることがあるが、フロイトはこの一見利己的かつ無根拠ともとれる主張を、既に理論化していた偉大な人物であったのである。


概要:下巻は、上巻を布石に新たなる展開へ
本文:フロイトが、なぜ精神分析入門を錯誤行為や夢から語り始めたか、そのアプローチの理由については上巻でも触れられていたが、第二十四講「普通の神経質」で全貌が明かされる。

フロイトが、「人類」レベルの視点を欠かさなかったこと、また、精神分析を「科学(当時の)」に位置付けていたことを改めて認識した。哲学批判、宗教批判をした上で、「科学」を顕揚するとともに、「科学」に踏み止まる態度を示した。弟子であったユング、アドラーをチクリと批判しているが、マルクス主義批判が、今読んでも当たっていることには驚く。

上下巻を通じて、素人の私には論理展開が相当込み入っているように感じる。心というものが、そのような表現でしか表しようがないからなのか、精神分析がそのような歩みで進んできたからなのか。フロイトの言う「心的装置」の考えから、こころを何か機械的なモデルとして必死に捉えようとしている、あるいは原因→結果の線を何度も引き直すためにモデル改変に奮闘しているような感じを受け、こころとはちょっと違うんじゃなかろうかと感じた。

入門とはいえハイレベルである、あるいはハイレベルな所までフロイトが我々を引っ張っていってくれるとも言えようか。それにしても、フロイトの語り口はユニークで楽しい。

概要:講義の中心部
本文: フロイトの講義も佳境にå...¥ã£ãŸã€Œç¥žçµŒç-‡ã€ã®åŠã°ã‹ã‚‰ã"の下巻に収録されている。最è¿'æ"¹è¨³ã•れたので、ã"れã‚'買うときには版に注意がå¿...要だ。

 下巻は主にフロイトのメタサイコロジーが語られる部分だと言える。ã"れまでの観察や考察ã‚'もとに、フロイトの理è«-が語られていくのã‚'読むのは、ほかのどã‚"な本ã‚'読むã"とよりもスリリングだと言い切ってもいいだろう。臨床例も豊富に語られるので、それã‚'読むだã'でも面白い。

 さらにã"の巻には、のちにフロイトが書き足ã-た続編も収録されている。ã"れは『講義』出版後にフロイトが見いだã-たいくつかのæ-°ãŸãªè¦‹åœ°ã‚„、よりå¹...広いè¦-点からの問題ã‚'語ったものである。資æ-™ã¨ã-て最も価値があるのは実はã"の部分で、とくに女性にé-¢ã™ã‚‹ç« ã¯ã€ãƒ•ロイトがå"¯ä¸€ã!€ç²¾ç¥žåˆ†æžã«ãŠã'る女性の問題についてまとまった形で述べているものとã-て重要である。フェミニズム運動も、ã"れã‚'批判するã"とに大きな重点ã‚'置いてきた。


著書名 夢判断 上 新潮文庫 フ 7-1
著者名フロイト
出版社 新潮社
ASIN 4102038035
装丁 文庫
価格 ¥ 740
感想文概要:個々に対応していない
本文:『夢診断』と銘打たれたから買ったものの、訳文は非常に難解かつ回りくどい。
実際にフロイトが夢診断を行ったページまで読んだが、これは自分の夢を診断しようという目的で読む人にはお勧めできない。
何故ならばフロイトが実例を用いて解釈をしているからである。(それもフロイトだから出来ることであろう)
私は自分の夢の手がかりになればと思い買ったので正直がっかりだった。
心理専攻学生などが読むべきものであると解釈した。

概要:フロイトを学ぶなら是非
本文:ジグムント・フロイトが1900年に著した本です。
彼は、自由連想法や夢の分析により、患者の抑圧された無意識の欲求が、夢や錯誤行為となって表れてくることを経験的に導き出しました。
原題は「Traum-deutung」で「夢の読み方」だそうです。
夢の中に出てくるもののイメージそのものよりも、出てきたもののことばの「音の響き」の連想で解釈を進めていっています。
けれど、遠まわしな表現が多くてちょっと分り難かったかな。
おそらく読み手に極力誤解を与えないような言語表現を選んでいった結果だと思うのですが。
逆に分り難くなってるよ、、、。
訳者の高橋先生の苦労の跡が見て取れます。
自分の理論を読み手が分っている事を前提に話が展開していくので、本の内容をよく消化出来ていないと、何回も前に戻って確認したりしてしまいます。
なので、わたしは時間がかかってしまいました。
ん?わたしがアホなだけでしょうか( ̄△ ̄;)

上のような理由で「分かり難さ」はあるので、一番最初に読むよりも、同じフロイトさんの「夢と夢解釈」を読んでみてから読まれることをお薦めしたいと思います。
でも、読み応えがあって面白い本でした。
次は「下」の方を読んでみます。

概要:この書物こそフロイト入門
本文:「夢判断」はフロイトによる自己分析の書でもあります。もちろん、読者は「夢は願望充足である」というキーワードをめぐる理論的展開について知るのですが、随所に盛り込まれているフロイト自身の少年時代や医学に携わってからの名誉心や嫉妬心についてのエピソードも興味深く、自伝的な要素もあり、フロイト論文の中でもやや特異な位置をしめる著作と思われます。また、所々にちりばめられているいろいろな比喩や文学作品からの引用により、ともすれば無味乾燥になりがちな心理学的理論が活き活きとしたものとなり、自然と理解が深まるように工夫してあり、フロイトの作品が文学的にも評価が高いと言われている理由がよくわかります。これから読もうと思っておられる方には、この書物は単なる夢についての心理学的理論書ではなくて、フロイト自身の臨床経験および人生経験の結晶であるとお伝えしたいと思います。

概要:ある意味科学への分岐点であるフロイト
本文:個人的に関心を引く箇所は多々あったものの、ところどころが難解。上巻では主に「夢とは何ぞや」をテーマに展開していると思う。たしか前意識は出てこなかったと思うが、夢は願望充足なんだよ、てことが最大のメッセージだったであろう。いずれにせよ、リビドーのつっこんだことや、無意識に関するその他の理論も下巻で詳しくやるのではないだろうか。だから、一般的に我々が知るフロイト理論の多くは下巻で登場してくるのだと思う。ところで、フロイトがコカインを利用していたエピソードがやはり興味深かった。

概要:知は力である!?
本文:夢は一種の精神病です。精神病者は不合理な夢の世界を現実に生きているのです。それならば、夢を合理的に解釈できれば、精神病は私たちに理解可能なものになる筈です。そして、不可解な夢を合理的な言葉で説明できるように、ある症状に苦しんでいる患者がその症状を生み出しているコンプレクスを言葉にできたとき、病から癒えることができる、とフロイトは言います。明晰な認識こそが人を正常にする、知は力なり(スピノザ)、という訳です。ーーでも、私たちに知られる無意識自体が、意識にのぼった時点で既に変形・歪曲されたものですから、私たちは決して無意識の<全貌>を知ることができません。夢の分析に終わりはない、ともフロイトは考えていました。

フロイトは徹底したリアリストです。同じ課題を繰り返し提出し、分析し、説明し、推敲し、修正し、定義し直します。マルクスにも矛盾をそのまま提出しながら現実に近づこうとする傾向は見られますが、マルクスは人間のあるべき方向を示そうという努力もしています。一方フロイトは、ただ現実世界で生きる人間の赤裸々な深層心理をえぐり出すだけで、甘い理想は決して口にしようとしません。--人間を理解するために動物に対する以上の手段は必要ではない! どうして他生物の存在意義を問わないのに、人間の存在価値だけを問題にするのか? 人間は意識(自我=私)によって生きているのではなく、無意識(エス=それ)によって生かされているのですから、人生の意味を問うことなど本来不要なのです。人間は他の生命体と同様、もともと無目的に存在しています。

フロイトの方法によって、人類がなぜ殺し合うのかを明らかにできるかもしれませんが、だからといって、その分析が、人類の戦争放棄の可能性を示すことを意味しません。ーー私にとって、フロイトほど恐るべきニヒリストはいません。


著書名 フロイトの精神分析 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!-)
著者名鈴木 晶
出版社 ナツメ社
ASIN 481633646X
装丁 単行本
価格 ¥ 1,418
感想文概要:初心者に最適!
本文:フロイトの精神分析についての入門書です。
図解雑学シリーズの特長であるイラストを上手に活かして、フロイト自身が書いた『精神分析入門』よりも遥かにわかりやすく仕上がっています。

また、タイトルは『フロイトの精神分析』となっていますが、ユング・エリクソン・ラカン等も簡潔に説明してあり、フロイト以降の精神分析の流れをに頭に入れることができるのも本書の長所でしょう。

本当の本当に基本的なところから、フロイト精神分析の本質まで非常にわかりやすく解説してくれているので、全く知識を持たない人が初めに手に取る本としてはまさに最適と言えます。良書。


概要:初心者向きでありながら、生きた理解のための配慮のある良書
本文:フロイト論や彼の研究を1つ1つ分かりやすく解説はするが、批判や著者の意見は控えている姿勢が実に良い。確かに、大勢において、フロイト論のいくつかは批判的に見られているものも多い。しかし、ここでは、フロイトの精神分析学がどのように発達したかという視点により、初心者向けの本でありながら、意外に生きた理解を与えようという配慮が見られる。
本書は、単に一般向けのお茶を濁すようなフロイト解説書ではないと思う。むしろ、本格的なフロイトの論文集が文字だけで読みにくい場合もあるのと比べ、絵を多用した本書は直感的に分かりやすいと共に、解説すべき部分はしっかりと丁寧に記述されている。
これを読んだ後であれば、フロイトの代表的な著書である「精神分析入門」や、その他の専門的な論文集も読みやすくなることは間違いない。
良書の見本のような本である。

概要:難しい話をやさしく書くのも一種の才能!
本文:この本を翻訳した鈴木氏は、ゲイの「フロイト」をはじめとした、精神分析関係の本を多く翻訳し日本に紹介している研究者であり、フロイト理論についてのもっとも深く理解している研究者の一人であろう。理解していてもそれを平易な言葉で書き表すことには別の才能が必要であるが、鈴木氏は、どうやらその才能にも恵まれているようだ。挿絵もわかりやすく、正確であり、あやしげな入門書や教科書が多い、精神分析分野の本の中でもっともお勧めの一冊である。

概要:とりあえず、フロイトの理論と、その後継者達の潮流について概観を得たい、という人に
本文:理論といえば、何か固定された枠組みがあるかのように捉えがちだが、本書でフロイトの理論がその生涯に亘って変遷し続けたことが分かる。
特に「欲動二元論の変遷」は、エロスとタナトスに至るまでの変遷が整理されていて助かる。
「無意識、前意識、意識」と「エス、超自我、自我」の関係は、本書でもスッキリとは分からない。元々、フロイト自身のその説明も分かり難いとは言われる所ではあるが。

『錯誤行為』という言葉については目からウロコ体験をした。

「日常生活における間違い(言い違い、書き違い、聞き違い、読み違い、度忘れ、置き忘れ、紛失等)をひっくるめて、日本の精神分析学では『失錯』とか『錯誤行為』とか呼んでいるが、いずれもフロイトの著作を翻訳するためにつくられた言葉である。つまり、これらの間違い全体を示すような言葉はない。ということは、これらの間違いがあることは誰でも知っていたが、これらをまとめて1つの現象として考えた人は、フロイト以前にはいなかったということである。」


著書名 人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (光文社古典新訳文庫)
著者名フロイト
出版社 光文社
ASIN 4334751504
装丁 文庫
価格 ¥ 620
感想文概要:アインシュタインとの往復書簡
本文:アインシュタインの手紙への返事から始まっているところが、とても興味深かった。
確かアインシュタインは「僕は精神分析なんか受けたくない。」と言っていたと思うけれど、その精神分析の開祖であるフロイトと往復書簡を交わすことになったのが、結構面白い。
このイベント(?)は、ヒトラーがドイツで政権を握る一年前に行われた。
この手紙のなかで、アインシュタインは、「人間を戦争の脅威から救い出す方法はないものでしょうか?」という問いを投げかけている。それを受けてフロイトは、愛国心と銘打った、ナショナリズムの暴力性や危険性を指摘している。支配階級による、宗教や、マスメディアなどを用いた国民のコントロールの中には、権力欲を満たすための欲求、利益のみを追求しようとする欲望がある。そして、人間には、破壊する欲求が働いているからこそ、それを利用し、国民の「愛国心」を駆り立て、コントロールすることができるのだと言う。
これは、今でも何ら変わりのない事だと思う。
それから、人間に本来備わっている攻撃的な欲動が文化によってあまりにも抑圧されると、その欲動が行き場を失い、主体の内部へと向かうと書かれている。
タトナスへの欲動を抑える為には、文化的な圧力が最も有効だけれど、「自己の死」へと向かってしまうのは危険なことである。
全体の破壊と主体の破壊。
人間が本来持っている欲動なのだから、完全に無くしてしまうということは難しい。
でも何故、わたしたちはそれを押さえつけようと必死に足掻くのだろうか。
フロイトが考えた結論を知りたい方は、是非本書を手にとってみて欲しい。

概要:かなりネガティブな時期のフロイト先生
本文:中山元の訳によるフロイトの文明論集第二弾。
今回は、いつの時代も世界のどこかで繰り返される悲劇「戦争」、そして人間として避けることのできない「死」についてのお話。収録されている論文は、フロイト全集や他の文庫にすでに収められているものだが、この光文社版、というよりも中山の訳は文体がやわらかく、現代の日本語に直されていてとにかく読みやすい。注も充実していて、続巻が楽しみになる。

最初のアインシュタインへの回答の文章と、その次の論文は書き上げられたのが第一次世界大戦勃発以降であり、フロイトは人類史上に残るこの大戦に相当ショックを受けていたことがわかる。人類全体に対して不信感を露わにしているといっても過言ではない。

もともと彼の精神分析は、人類の本源的な無垢性や道徳心を信じてはいない(幼児性欲の理論など)側面があったが、戦争の経験を経たことで、フロイトはこの当時特に人間の先天的な「善性」「道徳心」に対してかなりネガティブな見解を示している。それに加えて、彼の思想の転回点となった「快感原則の彼岸」におけるエロス以外の欲動(=破壊欲動)の発見も伴い、本書所収の論文「戦争と死に関する時評」では「戦争は廃絶することができないものである」(95p)という、かなりペシミスティックな結論を導き出している。

その他にも、本来欲動は利己的であるから、外部からの教化で利他的に振る舞うことができるようにはなっても、真の意味で利他的な人は少なく、ほとんどの人は利己的な欲動を満たすために表面上で利他的なっているだけであり、要するにみな偽善者だと喝破する(残念ながらそれを私たちがまっさきに否定できない、というのも悲しいことではあるが)。

「喪とメランコリー」では喪、すなわち他者との死別から、メランコリー(=鬱病)を考察する。主体が(相手の生死を問わず)愛する人を失うことは、リビドーの対象の喪失をも意味し、自我はその緊急事態に直面して、自らの一部を対象と「同一化」することで事態に対処しようとする。すなわち、自らの一部にリビドーを向けかえるわけだ。しかしそのとき、かつて対象に向けられていたそのリビドーはアンビヴァレント(愛しさと憎さが入り乱れた感情)なものであるから、新たにそれの対象となった自我の一部は苦しめられ、その結果として鬱病患者は特に自己評価が低くなるのだという。

これって失恋したら共感できる話だよね。

概要:精神の解明。「生と死の欲動」或は「超自我・エス・外界と戦う自我」
本文:本書は1.読みやすい翻訳、2.豊富な注釈、3.熟慮された章立、4.内容理解に役立つ訳者解説(とフロイトの年表)等の特徴があり、フロイトが精神分析により導き出した以下の重要な理論を分かりやすく理解できると思います。

(1) 人は生への欲動(エロス)と死・破壊への欲動(タナトス)を愛憎のように合わせ持って生きている。
(2) 人の精神は、超自我、自我、エスで構成されており、自我はいつも超自我、エス、外界と戦わねばならない運命にある。

5章構成、1.「人はなぜ戦争をするのか」(アインシュタインへの書簡、1932年)2.「戦争と死に関する時評」(1915年)3.「喪とメランコリー」(1917年)4.「心的な人格の解明」(1933年)5.「不安と欲動の生」(1933年)の内、

第1章のアインシュタインは、訪日の際に日本という国がこの世に存在することを神に感謝し、ヴァイオリニストの千住真理子氏の祖父母が渡欧の船中で彼のヴァイオリンの音色にとても感動したという逸話がありますが、

彼の質問「なぜ人間は戦争を止められないのか。人間には攻撃衝動があるではないのか」へのフロイトの希望と絶望を抱えた回答がとても印象的です。

第3章「喪とメランコリー(鬱病)」では鬱病の症例の内、喪のように愛する人を失う、或はそれに類似するものを失うことに起因する事例について、喪の場合の愛する人の喪失から回復までの「喪の仕事」と比較しながら鬱病の原因を、「エロス、タナトス、超自我、自我、エス」の理論で究明します。

愛する家族や友人が鬱病を抱えている方は、その病の出自がどこに有り、彼・彼女の発言が何を意味するのか理解し、どうつき合えば良いのか考える一助になるかも知れません。

蛇足ですが、父に対する「喪の仕事」を未だ終えぬ間に、共に暮らすゴールデンを一昨日亡くし、愛犬のそれをも背負った独り暮らしの母がこの病に罹らないように祈ります。



概要:「生に内面化された死」への深い洞察
本文:第一次大戦の悲惨な体験は、「野蛮さを克服した文明人」というヨーロッパ人の誇りを打ち砕いた。フロイトもまた大戦に大きな衝撃を受けたが、彼のその経験は精神分析の理論を深化させた。「快感原則の彼岸」(1920)に登場した「死の欲動Todestriebe」という概念は、彼の弟子たちにもよく理解されなかった問題概念であるが、本書に収録された「戦争と死に関する時評」(1915) 「喪とメランコリー」(1917)「人はなぜ戦争をするのか」(1932) 等を読むと、フロイトが大戦をきっかけに死を深く考えたことが分かる。戦争は、家族や同国人など「愛する人々」だけでなく、敵兵という「憎むべき人々」の大量の死を体験させる。つまり、愛・憎しみ・死を一体のものとして経験させるのが戦争なのだ。フロイトは、愛と憎しみの両面をもつ「他者の死」を、自我の構造に内面化する。愛する者の死は我々に深い喪失感をもたらすが(喪に服し、鬱=メランコリーになる)、そこには対立する二つの契機が葛藤している。一つは、愛する者は私の所有物すなわち私の一部であるから、私の中で他者は生きているという、死を認めない気持ち。もう一つは、愛する他者といえども私の自由にならない絶対的なよそよそしさ=敵対性があり、その憎しみの契機ゆえに私は、彼/彼女の死を認め、望みさえする。「現代人は無意識のうちに愛する者の死を強く望んでいる」(p93)という驚くべき逆説。愛には必ず憎しみが含まれるというフロイトの洞察は、メラニー・クラインの登場を予感させる。

概要:文庫でたどる後期のフロイト理論
本文: 人間にある死の欲動とは? 人格を形成する「超自我」「エス」とは?……シリーズ第2弾の本書は、フロイト後期の精神分析理論(メタ心理学)を紹介しており、第一次大戦以降、理論改造しながら心の深層に鋭いメスを入れ続けた〈フロイト・ワールド〉の一端に触れることができる。

 収録しているのは、彼が研究生活の後半に発表した書簡や論文など5編。

 表題の「人はなぜ戦争をするのか」は、晩年の1932年にアインシュタインと交した公開の往復書簡。「人間を戦争の脅威から救い出す方法はないのか」――など、アインシュタインが質問したのに対する回答だ。

 この中でフロイトは、人間には生を望む欲動とともに、自らの死を望む欲動(タナトス)が存在する、とした「欲動論」を要約。死の欲動は外部に向けられると破壊欲動になることなどを指摘、「人間の攻撃的な傾向を廃絶しようとしても、それが実現できる見込みはない」と、悲観的な見解を示したうえで戦争防止に向け独自の提案をする。この欲動論は最後の「不安と欲動の生」(1933年)で、不安の考察を進めながら詳述されている。

 また、「心的な人格の解明」(同前)では、人の心をひとつの装置と捉えた「心的装置論」をわかりやすく解説。前期のフロイト理論で心のうちを〈意識〉〈前意識〉〈無意識〉の“3領域”に区分して考えたのに対し、さらに〈自我〉〈超自我〉〈エス(Es、原始的自我)〉という、人格を形成し、エネルギーを持った深遠な領域まで踏み込み、それぞれの特性や相互関係を解き明かしている。これは精神分析にとって大きな方向転換であり、後に発達する自我心理学の出発点になった理論だ。

 このほか、「戦争と死に関する時評」(1915年)において、第一次大戦による道徳の崩壊を欲動論と死の問題、両面から検討。「喪とメランコリー」(1917年)では、愛する者の死に対する人間の反応を分析、それが病へと移行するプロセスを究明している。

 全体を通じ、第一次大戦を境に精神分析体系の変革を試みたフロイトは、より心の奥深くへと探求の錨を下ろし、理論を深化させていったことがわかる。中でも「生」と「死」の二元的な欲動を追究した欲動論は、彼が最晩年に確信を抱くまでになったというだけに興味深い。かなり専門的な内容だが、訳者が紙幅を割き丁寧な解説をしているので、これからフロイトを学んでみようという人も比較的スムースに入っていけよう。





著書名 自我論集 (ちくま学芸文庫)
著者名ジークムント フロイト
出版社 筑摩書房
ASIN 4480082492
装丁 文庫
価格 ¥ 1,260
感想文概要:訳が良かった
本文:「自我」の役割についてよく分りました。
この論文は「フロイト全集17巻」にも収められているけれど訳がちょと違います。
翻訳された方が違うから当たり前ですけれど。

この中では特に、「快感原則の彼岸」の中で生物学的視点から欲動について考察されている部分がわたしは面白かったです。
ゾウリムシの話とかは大好きなので(^∇^)
今度ダーウィンの本も読んでみよっと。
あと、「マジック・メモについてのノート」も良かったです。
何でこれにこだわってるんだろう?と最初は思いましたが、人間の知覚装置をマジック・ノートに喩えているところが面白いなと思いました。
Short-term memoryのようなものかと最初思ったんだけど、ちょと違うのかな?まだまだ理解が浅いです。
フロイトの時代のものとはちょと違うのかも知れないけど、わたしも結構これが好きで小さい頃遊んだなぁ。
よく「りぼん」のオマケとかについてきたんですよね。
「否定」も良かった。
あ〜、よくある!と思いました。
「欲動とその運命」の、自体愛の話もとっても興味深かったです。

というか、やっぱりフロイトさんは面白い。

概要:フロイト初心者にはちょっと・・・
本文:フロイトの論文の中でも
自我について扱ったものを中心に集められている。

第一次局所論から第二次局所論への移行や
欲動を考える上でどうしても必要になり生まれ「死の欲動」の概念など
彼の自我に対する考え方、思想的な変遷はこれを読むことでわかる。

しかし、言っていることが論文ごとにころころと代わるので
初めての人は混乱すると思う。

始めてフロイトを読む人はこれよりも「精神分析入門」がお勧め。

概要:自我心理学のさきがけ
本文:フロイトの書いた論文の中の自我に関するものを集めた本。今までフロイト選集や
フロイト著作集が出ていたが、どれも訳が一貫してなく、間違いも多かった。その
為、原典を当たらねばならなかったが、本書はそういったことはなく、しっかりと
した訳となっている。

フロイトの自我は中期に出来てきた理論で、エスや超自我とセットで理解すると良
い。また、当時は現実を加えた3者から虐げられるかわいそうな存在として見られ
ていたが、後期になるごとにそれらをコントロールしていく司令塔のような機能を
もつものとなっていった。

フロイト以後はアンナフロイトやハルトマンを初めとした自我心理学派によって精
微化されていった。

概要:意見。
本文:「わたし」の意識はわたしが知らずにいる無意識によって規定されている。「意識」には「無意識」を、「理性」には「リビドー」を対置して、デカルト以来のヨーロッパ近代合理主義に疑問符をつきつけたフロイト。「自我」(「わたし」)を「意識」「前意識」「無意識」という構造として理解しようとした初期の論文から、それを巨大な「エス」の一部ととらえつつ「超自我」の概念を採用した後期の論文まで、フロイト「自我論」の思想的変遷を跡づけた。「欲動とその運命」「抑圧」「子供が叩かれる」『快感原則の彼岸』『自我とエス』「マゾヒズムの経済論的問題」「否定」「マジック・メモについてのノート」の8編を、新訳でおくる。

著書名 フロイト (講談社学術文庫)
著者名小此木 啓吾
出版社 講談社
ASIN 4061588605
装丁 文庫
価格 ¥ 1,418
感想文概要:"フロイト"が非常に理解しやすい
本文:良く難解だと言われる"フロイト"…

この本は、ジグムント・フロイトその人を知る事から始める。
それ故に、非常にフロイトの思想が良く分かる構成になっている。
大量にある、フロイトの著作中、最もフロイトが理解しやすいもの、理解しやすい箇所を選んで載せている所も良い。

それ以外で、この本で"フロイト"を理解しやすくしていると思われるのは、小此木氏の書き方(表現)が良いと言う事か。
無闇やたらと専門用語を使ったり、分かりにくい表現をしたりすると言う事が無いから、すんなりと読めるのである。

"フロイト"をもっと容易く理解したい、S・フロイト自身が知りたい…そんな人に是非読んで頂きたい。


著書名 フロイト入門 (ちくま新書)
著者名妙木 浩之
出版社 筑摩書房
ASIN 4480058540
装丁 新書
価格 ¥ 777
感想文概要:フロイトへの「入り口」のひとつ
本文:ある思想家の新書の入門書というのは、上手くいけば読者にとって手軽な導き手となり、有益
なものとなるのだが、書き手にとっては成功しても失敗しても総じて難しいものなのではない
だろうか。それは、「どこから入っていくか」という難しさだ。歴史上に名を残す、それこそ入門書
を書くに値する思想家なのだから、おそらくその思想体系も一言では言い表せないはず。
その中からこれはという重要な側面を取捨選択して、新書という限られた枚数に収めなければ
ならない。そこでは、書き手の知性や教養、文章力といったものとはまた別のセンスが試される。

本書はタイトル通り、精神分析の大家フロイトの新書。この著者が選んだのは、フロイトの個人史
を追いながら精神分析を説明する、という手法だ。ご存じの方もいるだろうが、フロイトは臨床経験
の中から、その独自の概念を構築していった。その点において、その臨床歴を追いながらフロイト
を考察することは、ある意味「正統」といえる。
彼もご多分に漏れず、生前にいろいろな人物と親密な師弟関係、友情関係を築いては、ある日
突然というほどいきなりその関係が破綻していたりする。本書が指摘するように、フロイトと周囲
にいた人の関係は、ユダヤ教徒と原父モーセ、あるいはオイディプス神話における父ライオスと
息子オイディプスの関係に奇妙に符合するのだから興味深い。

その反面、本書では基本的な概念の説明が手薄になっているようにも思える。例えば意識と前
意識、無意識、超自我と自我の違い。そしてそれら全ての源になっているEsの説明など、巻末
にある図解だけでは、本当の初学者にとっては厳しいところだろう。

他にも数多の入門書が出されている。例えば、フロイトの精神分析理論の中でもいきなりその
核心、性理論のみにスポットを当てているのがこちら↓
高校生のための精神分析入門 (ちくま新書)

概要:暴露本
本文:タイトルに「入門」と書いてあるけれど「入門書」っぽくはないので、この本からフロイトに入るのはあまりお薦めしませんし、
正直なところ内容にはかなり衝撃を受けましたけれど、ドキドキハラハラしながら一気に読めてしまいました。
そういう意味では読みやすい本であると思います。
フロイトの暴露本、、、というか、ゴシップ本のような気がしないでも無いけれど。
前半は、読んでいて「え”〜」って思いました。
「精神分析入門」あたりを読んでから読むことを強くお薦めしたいです。
ある程度フロイトを知っていないと、この本を読んでも「何が面白いの?」と思うでしょうから。

それにしても、どういう人を対象に書かれた本なのだろう(笑)。

わたしは、最後の方についている「読書案内」に載っていた『フロイト家の日常生活』という本にも興味を持ちました。
なんだかサザエさんチックでいいな。
実は、家政婦パウラさんが見たフロイト一家の暴露本。

概要:文章に難あり、内容も詰め込みすぎ
本文:フロイトの人生、伝記的事実に軸をおきながら、フロイトの精神分析の発展を跡付けた本。とりわけ人生のいくつかの重大な出来事とフロイトの思想とのかかわりに重点を置いて、ちょうどフロイトの人生そのものを精神分析的に取り扱っているところが特徴である。
そのような試み自体はいいのだが、理論の解説のところはしばしば煩雑で短いスペースに多くを詰め込みすぎているきらいがある。また、それでは伝記として十分な内容になっているかというと、著者がフロイト思想にとって重要だと考えるところの事実のみに偏っており、到底バランスの良い伝記ともいいがたい。結局のところ、「入門」と銘打ちながら、初心者が一読してフロイトの人生、思想のどちらかの概要を知るのにも不十分な本であるように思う。

またそれ以前の問題として、著者の文章に難があり、しばしば混濁した表現が見られる。また私が手にしているのは第一刷であるが誤植も少なくない。こうした点は編集者の責任も大きいように思う。

したがってフロイトに入門するのに本書から入るのはお勧めできない。概要を知るには鈴木晶氏の書物、やや専門的な本では小此木啓吾氏の本、そして思想と人生の関わりについては、やや大部になるがピーター・ゲイの本などを参照したほうが、より確かな理解が得られると思う。

概要:100年目のエッセンス
本文:フロイトの人生がなぜ精神分析という学問と不可分か?という問いを設定し、現代的な知見や新しい情報も盛り込みつつ、精神分析を創始したフロイトという文脈、フロイトの生きた社会的文脈を呈示する。
フロイトの死後、時間が経ち、フロイトを直接知る人々も去っていくことで失われた情報もあるかもしれないが、逆にフロイト神話から自由に、当事の社会的文脈からも距離を置いて語りうるようになった。
冷静で明晰な無駄のない文章に、かなり削り落とし絞り込んだ印象を受けるが、同時に、種々の図式、巻末の読書案内など、詰めに詰め込んでいるとの感想も持った。
読み応えがあり、精神分析に興味を持つ人に有益な一著。最初の一冊としても適切。まったくの予備知識がない人は、多少、圧倒されるかもしれない。

概要:フロイト入門
本文:フロイトの理論ではなく生い立ちを中心に解説された入門書でフロイトの幼児期の空想と現実的な出来事を織り交ぜながらどのように精神分析理論を構築していったのかについて著者のマニアック(?)と言ってよいほど詳しく詳しく書かれている。創始者フロイトではなく一人の人間フロイトとして接することができる本ではないだろうか。これまでのフロイトについては誤解や曲解が多く、またフロイトの後継者によるフロイト文庫の検閲などありフロイトの概要はつかめても細かいところはなぞに包まれているところもあったようである。さらに翻訳問題と言われるものもあり、英訳・日本語訳としてのフロイト文庫は原著とはかなり雰囲気が違っていたこともあったようである。しかし、最近ではもともとのドイツ語から日本語訳される作業が進み、フロイト文庫の開放が徐々にではあるがなされているところから今後は新たなフロイトイメージができてくるのではないかと思う。本書はそのような時代的な背景を受けて書かれている。

著書名 フロイト先生のウソ (文春文庫)
著者名ロルフ デーゲン
出版社 文藝春秋
ASIN 4167651300
装丁 文庫
価格 ¥ 740
感想文概要:目からうろこでした!
本文:少年犯罪や猟奇的殺人が起きるたびに、その人の生い立ちが取りざたされ、「母親が悪い」「育った環境が悪い」「学校生活がうまくいっていなかったから・・」などなど当人以外の要因があげられ、責任が転嫁されているのに疑問を持っていました。この本を読んで、そのような外的要素がほとんど個人に影響を与えず、大半は当人の遺伝子に起因する、要は当人の問題であると、明確にしていて、胸のつかえがとれた気がします。
むしろ、サイコセラピストなどは、そういった多かれ少なかれ誰もが持つ過去のトラウマをほじくり返して、それに現在の問題の原因にしてしまうという、サイコセラピストにかかる副作用的なことも言及されていてとても興味深かったです。
ぜひお勧めいたします。

概要:これはトンデモ本の一種なのではなかろうか?
本文:初めのうちはセンセーショナルな内容にわくわくしながら読んでおりました。
しかし、次第にいわゆるあの「トンデモ本」に特有な「トンデモにおい」がし出しました。
「トンデモにおい」とは、あのアスカ先生の御著作を1冊でもお読みいただければすぐ分かるものですが、
とにかく、「偉そう」「根拠無き断定」「自分の都合の良いデーターの勝手な引用」
「第一次的データー(自分で実験、観察、調査などで確かめたデーター)は皆無」
「反対説へのことわりなし」あたりに現れます。

その目で見ていくと、この本、かなりの「トンデモにおい」にあふれています。
勿論、私はトンデモ本が大好きです。
また、この本の引用する孫引きかひ孫引きか知らないようなデーターに、一面の真実もあるのでしょう。
(有るかもしれない位にしておきましょうか)
その意味では、まあ、面白く、意味のある本とも思えますが、
自分が日々経験している様々な心理学的事例を前にすると、
「おいおい、ここまでおもしろ半分で言い切っちゃっていいのかよ」
と突っ込みたくなるのは仕方のないところ。

ただ、この筆者の、
「人間の心には下らない心理療法など屁でもないほどの強靱な自然治癒力があるのだ」という信仰は、
それなりに心地よいものもないではありません。
これが事実ならどれほどすばらしいか…

そういうわけで、この本は、てなくらいのスタンスでお読みになられると、まあ、よろしいのでは。
あ、それでも、フロイト先生自身がそもそも「トンデモ」な事についての指摘は正しかったですよ。


概要:微妙です…学術書というよりは反通俗心理学キャンペーンのプロパガンダに見えます
本文:タイトルこそフロイトの名前が挙げられていますが、全体を通してはフロイト心理学を起点とした「(にわか)精神分析学」や「通俗心理学(確かこの言葉は菊池聡氏の著書で知りました)」に対する批判的意見をまとめたものです。
フロイトそのものの批判はカール・セーガンなどが反証可能性を検証する等詳しい批判をしていた記憶があります。
内容も著者の独自研究ではなく、主に心理学界で発表された論文や実験を元にそれを紹介するという構成になっており、心理学を知る本というよりはジャーナリズム的ルポライトという印象があります。
とにかく社会一般に流布されている通俗心理学に対する批判的意見を取り上げ、それを“きめつけ”により針小棒大に書いているように見えました。特に教育とマスメディアについて取り上げた章では『教育やマスメディアが人に影響を与えるという論証は一つも存在しない』というようなニュアンスで書かれ、あまりにも表現大袈裟過ぎると個人的には思いました。
また、それらの調査や実験に対して『この実験を行った人物は○○という結論に至っているが、この実験結果が××という事を証明してるのは明白である』という、それらの仮説を否定したいという動機からのダブルスタンダードが多く見受けられ非常に公平性を欠いた文章になっています。
また、心理学を少しでも知る人間になら常識的と言えるような部分が非常に多いです。

しかし、この書籍から価値を見出す事もできます。
一つは心理学者の菊池聡氏も主張しているように、世の中に蔓延る『心理学は何の根拠もなくでっち上げられたいかがわしい学問だ』という「通俗心理学」と学術的な裏付けのある心理学を混同しているあまり心理学に興味のない方にとっては、実際心理学ではどんな事が行われいるか具体的に把握でき、「通俗心理学」が学問を騙った都合の良い俗説の流布に過ぎないと言う事を知る事ができると思います。
もう一つは心理学者や特定の心理学の現象を名前を挙げ取り扱っているので、そこから関連書籍を探し出し、(いわばこの本の元ネタになった)研究などについて調べるのに非常に便利です。実際自分はエリザベス・ロスタフの「抑圧された記憶の神話」という良書に出会いました。

心理学について興味を持つための入門書。
心理学の特定の研究を知り、それについて調べるための目録。
という点においてはそれなりの価値があるというのが個人的な感想です。

そして、この本からは色々な意味において、「特定の主張を盲信する事の危険性」が学べると思います

概要:『フロイト先生のウソ』(ロルフ・デーゲン著・文春文庫)を読む
本文:心理学がこれほどまでに我々の日常に影響を与えるようになったのは、いつ頃からだろう?理解に苦しむ犯罪が繰り返されるたびに、その犯行の背景にある犯罪心理が問題になるし、被害者のカウンセリングの必要性も訴えられる。うつ病や、恐怖症、依存症等の精神障害が我々の日常に溢れ、それへの対策として心理学は注目され続けてきた。心理学の知識は、今や疎かにできないどころか、極めて重要なものだと言えるし、多くの心理学的知識やアプローチへの理解を我々は既に持ち合わせている。

これら心理学の常識の多くが、実はとんでもない誤解やウソからできあがっていることを、この本は指摘、フロイトについて「マルクスよりもさらに大きく持続的な損害を引き起こした」とまで言い放っている。

幼少期のトラウマが無意識の中に封印されるというが、戦争や拷問の体験者がその恐ろしい記憶を抑圧して多重人格になる例など一例もない、とか、こどもの能力を信じて自尊意識を高めてやることが学力向上に繋がるというが、むしろ勉強の必要性や学校、成績の重要性をしっかり認識させることこそが大切だ、というような言われてみればきわめて当たり前のことが例示される。

鮮やかでもっともらしい(いや、ときには常識を覆すような、しかし自分に都合のよい)説明に我々は弱いものだと思い知らされる。

心理学の知識は、今後益々必要になるだろう。だからこそ、間違った常識に囚われないように、心掛けねばなるまい。


概要:たいした内容ではない
本文:とりあえず精神分析の悪口を読みたい人は読んでもいいと思いますが、まっとうな批判を期待しているならばあまりお勧めできません。
精神分析にけちをつけるために、権威の名前を持ち出して「誰々は何々と言っている」式の引用ばかりで、肝心の実証データの引用がほとんどない。うんざりしてしまいました。
僕個人は精神分析はやはり科学としては成立していないし、精神分析的心理療法もプラセボ以上の効果を持ってはいないだろうと思っています。その点は著者と同感なのですが、とはいえある説を批判するにもそれなりのルールがあると思います。「著名な学者先生たちが精神分析はインチキだっていってるよ」というだけではまったく批判したことにはなりません。



著書名 エロス論集 (ちくま学芸文庫)
著者名ジークムント フロイト
出版社 筑摩書房
ASIN 4480083456
装丁 文庫
価格 ¥ 1,365
感想文概要:フロイトが言う「性」とは何か
本文:本書は、性とエロスについてのフロイトの論文が纏められたものである。
フロイトが著した各論文の所々に散りばめられた、エロスに関する言及が、きゅ−−っと濃縮されたような感じ。
フロイトの入門書としてはどうかと思うが、そんなに敷居の高い本でもなく、人間にとって切っても切り離せないような身近なテーマである「性」や「エロス」について、
誰が読んでもそれなりに実感を伴つつ読み進めて行くことができる本であると思う。

ところで皆さんは、性やエロスと聞くと一体どんな印象を受けるだろう。
性とは、何か?
エロスとは、何か?
これに関するテーマは、約100年前でも現代でも、最も慎重に扱われるべき重要なテーマであることに何ら変わりはない。
フロイトは、今から約1世紀前にこのテーマに真剣に取り組んだ。
ちょっと考えてみて欲しい。
性については、比較的オープンになってきた現代でも重要なテーマではあるが、当時のウィーンでは口にするのも憚(はば)かれるような戒慎すべき事柄であった。
それにも拘わらず、フロイトはここまで深い考察を試みていたという事に、現代のわたし達がこの本を読んでも驚かされるのではないだろうか。
当時、他にもこんな風に考えていた人は居ただろうとは思うが、「天才とは、言ったもん勝ちである。」
と思ってしまった。
しかし、そのような時代だったからこそ神経症と性が容易く結びついたのかも知れない。
非凡な着眼であることには変わりは無いと思うが。
女性の「性」についての分析も、何故ここまで的確な表現で言語化出来るのだろうか?と思う。
彼の特殊な生育暦が、ここまで深い考察ができた事に関与しているのだろうか。

わたしは特に、子どもがどのように性的な発達を遂げるのか?という疑問があったのだが、本書を読み、
それがどんなに子どもにとってもどれ程重大なテーマなのか改めて認識せざるを得なかった。
子どもが正常な発達を遂げるためにも、周りの大人たちは注意深く、適切な対応をし、正しい知識を身に付けさせるべきである。

概要:誤解されるところ
本文:フロイトのよく誤解されるところにこの性欲論がある。一般的に成人の性欲や性器
をイメージしてしまうが、フロイトは小児性欲ということで、エロスや性をもっと
広い概念で捉えている。

また願望充足といった言葉も幼児的願望ということで、これまた誤解を受けてしま
うところである。

またこれらの性欲論は治療の中で現れる転移のメタファーとしてみることで色々と
謎が解けるものである。治療をしていない人にとっては単なる性に関する理論とし
てしか見られないが、治療をしていると様々なところでメタファーとして活用して
いくことができる。

概要:性理論の理解なくしてフロイトは語れず
本文:フロイトの無意識概念やメタサイコロジー学説については既に一般教養としての市民権を得ているわけですが、性理論については嫌悪感や胡散臭さを感じる人が多いと思われます。しかし、フロイト性理論の金字塔である「性理論三篇」から順を追って本書をじっくり読み進めると、リビドーの発達と変遷についての知識が人間理解にとっていかに必要不可欠であるかということがよく分かります。とくに、性差としての女性性について考察しているところなどは、まさに目から鱗でした。フロイト性理論についての偏見や誤解を払拭するためにも、本書が手に入れやすい文庫本で出たことに大いなる価値があると思われます。

概要:エロスの分野における必読の書
本文:フロイトのエロスに関する主要論文が収められている。内容についてはいまさら語るに及ばないが、翻訳はまずまずといったところである。性欲動と自我欲動の関係は少々わかりにくい。すこし議論が分散していて焦点を結びにくい感じがある。訳者が巻末に載せた「エロスの一般理論の試み」はフロイトのエロス理論の簡潔で解りやすい解説となっているから、フロイト初心者はそちらを先に読んで全体的な構成を頭に入れてから、本文に当たるとよいかもしれない。

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